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消防水利と消防用水、消火水槽の違いを解説!設置基準から運用まで

消防水利

火災発生時、迅速な消火活動に不可欠な「水」。

その供給源となる設備には「消防水利」「消防用水」「消火水槽」といった、よく似た言葉が使われます。

これらは一見すると同じように思えるかもしれませんが、実はその定義、目的、設置基準、そして管理責任者まで明確な違いがあります。

例えば、街中で見かける消火栓や、公園の地下にある防火水槽は誰が管理しているのでしょうか?

また、大規模な商業施設に必要な水の供給設備は、どのような基準で設置されるのでしょうか?

これらの違いを正しく理解することは、建物の所有者や管理者はもちろん、地域社会の安全を守る上で非常に重要です。

この記事では、Google検索で「消防水利 消防用水 違い」と検索するユーザーの疑問を解消するため、それぞれの定義と役割、具体的な種類、法律で定められた設置基準、そして混同しやすい「消火水槽」との違いについて、網羅的かつ分かりやすく解説していきます。

目次

消防水利とは?消火活動の「水源」の全体像

消防水利の定義と役割

消防水利とは、最も広範な意味を持つ言葉で、消防隊が消火活動を行う際に必要とする「水の供給源」全般を指します。

これは、火災という緊急事態に際して、消防ポンプ自動車が水を確保するための水源となる施設、または水源として利用できるよう指定された場所の総称です。

その役割は、消火活動の基盤を支えることにあり、自然の水源から人工的に整備された施設まで多岐にわたります。

消防水利の種類

消防庁が定める「消防水利の基準」において、消防水利には以下のような多様な種類があります。

私たちの身近な場所にも、多くの消防水利が存在しています。

種類概要
公設消火栓・私設消火栓道路でよく見かけるマンホール型の消火栓(公設)や、工場などの私有地に設置される消火栓(私設)。水道管に直結しており、安定した水の供給が可能。
防火水槽地下や地上に設置され、あらかじめ消火用の水を貯めておく貯水設備。水道管が未整備の地域や、断水が予想される地域の重要な水源となる。
プール、河川、海、井戸、下水道など学校のプール、河川、池、湖、海といった自然の水源や既存の施設。一定の条件を満たすことで消防水利として指定される。

消防水利の設置基準と給水能力

消防水利は、いざという時に確実に機能しなければならないため、消防法に基づいて厳しい設置基準が設けられています。

給水能力の基準

消防水利は、常時40立方メートル以上の水を貯水しているか、または取水可能水量が毎分1立方メートル以上で、かつ連続して40分以上の給水能力を持つ必要があります。

これは、標準的な消防ポンプ自動車が2口のホースで放水(毎分500リットル×2口=毎分1立方メートル)するのを、40分間継続できる能力に相当します。

配置間隔の基準

市街地や準市街地のように建物が密集している地域では、防火対象となる建物から一つの消防水利までの水平距離が、地域の年間平均風速に応じて80メートルから120メートル以下になるように配置することが定められています。

また、消火栓だけに偏らず、防火水槽などもバランス良く配置することが求められます。

その他の設置条件

その他にも、消防ポンプ自動車が容易に近づけること、取水する場所の水深が0.5m以上あること、地盤面からの落差(水源の水面までの高さ)が4.5m以下であること、地下の防火水槽などに吸管(水を吸い上げるホース)を入れるための投入孔は、一辺または直径が0.6m以上であることなど、細かな条件が定められています。

参考:消防法第20条(消防水利の基準及び水利施設の設置等の義務)

消防水利に関する注意点

消防水利の周辺は、緊急時の消火活動を妨げないよう、駐車が厳しく制限されています。

道路交通法により、消火栓や指定消防水利の標識から5メートル以内の場所、または消防用防火水槽の吸水口や吸管投入孔から5メートル以内の場所は駐車禁止です。

日頃からこれらの場所を意識し、駐車しないように注意が必要です。

消防用水とは?消防隊が直接利用する特定水源

消防用水の定義と役割

消防用水とは、消防水利という大きな枠組みの中でも、特に広い敷地に建つ大規模な建築物において、延焼段階の火災を消火するために消防隊が直接利用する水利を指します。

具体的には、防火水槽やプール、池など、常に規定された水量以上の水が得られる貯水設備や、そこから効率的に取水するためのシステム全体を指す、より具体的な概念です。

消防用設備点検報告書などでは、この「消防用水」という分類が用いられます。

消防用水の設置が必要となる建築物の条件

消防法施行令により、一定規模以上の建築物には消防用水の設置が義務付けられています。主な条件は以下の通りです。

  • 敷地面積が20,000平方メートル以上で、地階を除く1階および2階の床面積の合計が、耐火建築物で15,000平方メートル以上準耐火建築物で10,000平方メートル以上その他の建築物で5,000平方メートル以上となるもの。
  • 高さが31メートルを超え、かつ、地階を除く延べ面積が25,000平方メートル以上となる高層建築物。

また、同じ敷地内に複数の建物がある場合でも、建物間の距離が近い(1階は3m以下、2階は5m以下)などの条件を満たし、床面積の合計が上記の基準を超える場合は、全体を一つの建築物とみなし、消防用水の設置が必要になることがあります。

消防用水の設備タイプと構造詳細

消防用水の設備は、水源の場所や取水方法によって、主に以下のタイプに分類されます。

自治体によって細かな基準が異なる場合があるため注意が必要です。

1. 地盤面下4.5m以内の消防用水(吸管投入孔を設けるもの)

消防ポンプ自動車の吸管を直接投入して取水するタイプです。

項目概要
吸管投入孔大きさは一辺0.6m以上の正方形または直径0.6m以上の円形。必要な水量に応じて個数が定められる(例: 40m³未満で1個以上、40m³以上で2個以上など、自治体により基準が異なる)。
集水ピット吸管投入孔の直下に設けられるくぼみ(釜場)。効率的な吸水を目的とする。

2. 地盤面下4.5m以内の消防用水(採水口を設けるもの)

地上に設けられた採水口に消防隊のホースを接続して取水するタイプです。

項目概要備考
高さ地盤面から0.5m以上1m以下
口金規格地域により異なるねじ式口金例: 福岡市 (呼称75), 北九州市 (呼称65)
配管呼び径専用配管とし、地域により異なる例: 福岡市 (80A以上), 北九州市 (100A以上)
設置個数必要水量に応じて定められる例: 40m³未満: 1個, 40m³以上120m³未満: 2個

3. 地盤面下4.5mを超える消防用水(ポンプを用いる加圧送水装置)

水源が地盤面下4.5mを超える深い場所にある場合は、ポンプを用いた加圧送水装置が設置されます。

このタイプの採水口は、呼称65の差し込み式口金が一般的です。消防隊が遠隔でポンプを起動できる装置や、その作動状況を示す起動表示灯の設置も求められます。

ポンプは他の設備と兼用しない専用のものとし、必要な水量に応じて毎分1,100リットルから3,300リットルといった吐出量を持つ能力が必要となります。

4. 地盤面より高い部分に設ける消防用水(高架水槽など)

高架水槽などを利用するタイプです。採水口の高さや個数は地上のものに準じますが、水圧が高くなりすぎないように調整する措置が必要です。

配管設計の要点と摩擦損失の計算

消防用水の配管は、消防ポンプ車が毎分1,000リットル以上の水量を確保できるよう、配管内の抵抗(摩擦損失水頭)の合計が6mを超えないように設計することが求められます。

混同しやすい用語「消火水槽」との違い

消火水槽とは?建物内部の消火設備水源

防火水槽と名前が似ていて混同されやすいのが「消火水槽」です。

消火水槽は、建物に設置された屋内消火栓やスプリンクラー設備、泡消火設備といった「建物内部の消防用設備」に水を供給するための専用の水源です。

主に建物の地下ピットに設置されますが、地上や屋上に設置されることもあります。

その目的は、あくまでその建物内で発生した初期火災を、建物内の人々や設備で消し止めるためのものです。

防火水槽と消火水槽の管理者の違い

この二つの最も大きな違いは、その位置づけと管理責任者にあります。

設備名位置づけ目的設置・維持管理の責任者
防火水槽公共施設 (消防水利)消防隊が消火活動に利用地方自治体 (市町村)
消火水槽建物の私有設備建物内の消火設備 (スプリンクラー等) の水源建物の所有者・管理者

つまり、防火水槽は公設消火栓と同じ「公共の財産」であり、その設置や点検・維持管理は市町村などの地方自治体が行います。

一方、消火水槽は、その建物に付随する私有設備であるため、設置、点検、修理などにかかる一切の義務と費用は、その建物の所有者や管理者が負うことになります。

消防水利・消防用水の点検と維持管理について

公共施設としての防火水槽の点検・維持管理

防火水槽を含む消防水利は、消防法第17条に基づく「消防用設備等点検報告制度」の対象となり、常に使用できる状態に保つことが義務付けられています。

点検は定期的に行われ、その結果を消防長または消防署長に報告する必要があります。

  • 機器点検: 6ヶ月に1回以上(外観や簡易な操作による点検)
  • 総合点検: 1年に1回以上(設備の全部または一部を実際に作動させて行う点検)

これらの点検・維持管理は、管理者である地方自治体の責任において行われます。

建物管理者による消火水槽の点検・維持管理

消火水槽も同様に「消防用設備等点検報告制度」の対象ですが、これは公共施設ではないため、建物の所有者または管理者が自らの責任と費用負担で点検・報告を行わなければなりません。

一般的には、専門の保守点検業者に依頼して実施します。

標識による表示義務

消防用水がどこにあるかを消防隊に明確に示すため、標識の設置が義務付けられています。

吸管投入孔には「消防用水」と表示した標識を、採水口には「採水口」または「消防用水採水口」と表示した標識を設置する必要があります。

また、その場所で取水できる有効水量なども明示することが求められます。

まとめ

今回は、「消防水利」「消防用水」「消火水槽」という三つの用語の違いについて詳しく解説しました。

  • 消防水利: 消火栓、防火水槽、河川などを含む、消防隊が利用する「水源」の最も広範な総称。
  • 消防用水: 大規模建築物などに設置が義務付けられる、消防隊が直接利用するための特定の貯水・送水設備。
  • 消火水槽: 建物内のスプリンクラーなどの水源となる、建物所有者が管理する私有設備。

これらの設備は、それぞれ異なる目的と基準、管理体制のもとで私たちの安全を支えています。特に、防火水槽は公共の財産であり、消火水槽は個々の建物の財産であるという管理責任者の違いは、重要なポイントです。これらの知識は、安全なまちづくりと、万が一の際の迅速な防災・減災活動に繋がります。

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