消火器が必要かどうか、どこに何本置くべきかは、建物の広さだけでは決まりません。
建物の用途や延べ面積に加え、地階や無窓階といった階の条件、火を使う設備の有無などが重なって設置義務が定まります。
実際の置き場所も、消火能力の数値だけで決めるわけではありません。
いざというときに歩いて取りに行ける距離や、持ち出しやすさを踏まえて決めることになります。
たとえば、小さな飲食店でも、火を使う設備の条件によっては消火器の設置が求められます。
反対に、すでに消火器を備えている建物でも注意が必要です。
改装で間仕切りを増やしたり用途を変えたりすると、従来の本数や配置のままでは基準を満たさなくなることがあります。
この記事では、店舗や事務所、共同住宅などを管理されている方に向けて、設置義務と配置を確かめる手順をまとめました。
実際の建物では条例や特例が関わることもあります。
判断に迷った際に消防署や専門業者へ相談できるよう、手元に用意しておきたい資料もあわせて紹介しています。
この記事でわかること
- 用途・面積・階・火気による設置義務の考え方
- 歩行距離、高さ、標識など設置場所の確認点
- 消火器の種類と設置後の点検で気をつけること
消火器の設置義務は用途と面積や階の条件で確認する
主な用途別の基準を把握する
消火器具の設置対象は、消防法施行令第10条で定められています。
まずは建物がどの用途にあたるかを見て、延べ面積や階の条件と照らし合わせます。
「特定防火対象物なら150㎡、それ以外なら300㎡」という大まかな二分だけでは正確に判定できません。
一般的な建物の代表例を次の表にまとめました。
これは用途をすべて列挙したものではありません。
複合用途の建物や危険物の取扱い、条例による付加基準などは別途確認が必要です。
| 用途・対象の代表例 | 設置対象となる基準 | 確認する条件 |
|---|---|---|
| 劇場・映画館、遊技場、カラオケボックスなど | 延べ面積にかかわらず対象 | 法令上の用途区分を確認する |
| 飲食店・料理店など | 火を使用する設備・器具がある場合は延べ面積にかかわらず対象 | 防火上有効な措置が講じられた器具の例外は次章参照 |
| 物品販売店、ホテル、共同住宅、工場、倉庫、上記の火気条件に当てはまらない飲食店など | 延べ面積150㎡以上 | 設置義務の判定に用いる延べ面積と、各室の広さを混同しない |
| 事務所、学校、図書館、神社・寺院など | 延べ面積300㎡以上 | 学校でも幼稚園・特別支援学校は別区分 |
| 令第10条第1項第1~4号に該当しない建築物の地階・無窓階・3階以上の階 | その階の床面積50㎡以上 | 無窓階は消防法令上の有効な開口部による判定が必要 |
病院や診療所、福祉施設は、入院・入所の有無や利用者の状況などによって区分が細かく分かれます。
施設名だけで表に当てはめず、所轄消防署に用途区分を確認してください。
また、建物の面積とは別に、少量危険物や指定可燃物の貯蔵・取扱いも設置要件となります。
テナントと共同住宅は建物全体の使い方も確認する
雑居ビルに入る店舗などでは、借りている区画の面積だけで判断すると、ほかの用途や階の条件を見落とすことがあります。
用途ごとの扱いは消防法施行令第9条などを踏まえ、建物全体の図面と自分の区画の位置を突き合わせて確かめます。
また、共同住宅も「住まいだから消火器は任意」とは限りません。
建物としての設置義務と、各住戸のなかに自主的に備える消火器は分けて考えます。
特例が適用されている物件もあります。
現在の配置に至った届出や図面を管理会社に確かめておくと安心です。
小規模飲食店は火を使う設備の有無を確認する
150㎡未満でも設置対象になる場合
飲食店などでは、火を使う設備や器具を設けている場合、原則として延べ面積にかかわらず消火器具の設置が求められます。
2019年10月1日から対象が広がっており、「小さな店だから不要」とは判断できません。
対象となるのは、飲食物の調理に用いるこんろなどです。
厨房の固定設備だけでなく、客席などで使う卓上こんろも含まれます。
設置義務を判断する際は、まず店内で使う器具の種類と安全機能を洗い出します。
なお、火を使う器具がない場合や、すべての対象器具に「防火上有効な措置」が講じられている場合でも注意が必要です。
延べ面積が150㎡以上あれば、別の条件で設置対象となります。
地階などの階の条件や、少量危険物等の取扱いも見落とさないでください。
調理油過熱防止装置などの例外は器具ごとに確認する
消防法施行規則第5条の4では、防火上有効な措置として次の装置が挙げられています。
・調理油過熱防止装置
・自動消火装置
・その他所定の安全機能を持つ装置
器具に何らかの安全装置が付いていれば、すべて例外になるわけではありません。
たとえば、火が消えたときにガスを止める「立ち消え防止安全装置」は、この防火上有効な措置には含まれません。
取扱説明書や型式を見て、厨房などで使う器具ごとに判断します。
店内に複数の器具がある場合、一台のこんろの機能だけを見て店舗全体の結論を出さないよう気をつけます。
営業を続けるなかで器具を追加・交換した際も同様です。
設置義務や配置に影響しないか、その都度見直してください。
出典:e-Gov法令検索 消防法施行規則 第5条の4 、吹田市 小規模飲食店への消火器設置の義務化
設置位置は歩行距離と高さや標識で確認する
対象となる階で実際の歩行経路を確かめる
大型消火器以外の消火器具は、消防法施行規則第6条第6項に基づき設置します。
対象となる部分から一つの消火器具までの歩行距離が20m以下になるように配置します。
一般的な配置では、防火対象物の階ごとに各部分からの距離を測ります。
ただし、延べ面積150㎡未満で、火気設備・器具があるために設置対象となる小規模飲食店等(少量危険物等を除く)には特別な規定があります。
この場合、火を使う設備・器具がある階を対象とします。
その飲食店に床面積50㎡以上の地階・無窓階・3階以上の階があれば、その階も含めます。
「どんな建物でも無条件に全階へ一本ずつ」と決めつけず、対象となる階と部分を先に確かめます。
また、歩行距離は図面上の直線距離ではありません。
間仕切りや棚、扉の位置を踏まえ、人が実際に通れる経路で測ります。
「消火器同士の間隔を20mにすればよい」という意味ではありません。
部屋の奥から取りに行く経路が20mに収まるかを見落とさないようにします。
なお、大型消火器には別の配置基準が設けられています。
一般の消火器の20m基準と混同せず、設置対象や適応性とあわせて確認してください。
持ち出せる場所に置いて標識を見やすくする
消火器は、通行や避難の妨げにならず、いざというときにすぐ持ち出せる場所へ置きます。
床面からの高さは1.5m以下とし、設置箇所には「消火器」と表示した標識を見やすい位置に設けます。
この標識は、置き場所がわかりにくいときだけ貼るものではありません。
収納庫の奥へしまい込む、前に荷物を積む、扉の開閉を妨げる位置へ置くといった状態は避けてください。
消火器の姿が見えていても、実際に持ち上げて運び出せる空間があるかまで確かめます。
屋外や厨房では、雨水や湿気、熱などによる劣化も考慮します。
薬剤の凍結・変質・噴出のおそれが少ない場所を選び、状況に応じて格納箱などで保護します。
製品の使用温度範囲や設置方法にも目を通しましょう。
日々の清掃や荷物の移動で使いにくくならない場所を選びます。
出典:e-Gov法令検索 消防法施行令 第10条第2項 、消防法施行規則 第6条第6項・第7条・第9条
必要本数と消火器の種類は合わせて判断する
能力単位だけで本数を確定しない
設置義務があるとわかっても、「各階に一本置けば十分」とは限りません。
必要な本数は、用途や面積などから求める消火能力と、配置条件の両方を満たすように決めます。
業務用消火器の「能力単位」は、消火能力を表す数値です。
同じ本数でも製品によって能力が異なるため、以前と似た大きさの消火器を買うだけでは、必要な能力を満たしているか判断できません。
設置義務を判定する150㎡・300㎡などの面積と、能力単位を求める際の算定面積も別の基準です。
また、少量危険物や指定可燃物、電気設備、多量の火気を使う場所には、付加的な設置の検討が求められます。
ほかの消火設備がある場合の減少規定にも適用条件があります。
本数を減らしたいときは、現在の設計条件を確かめずに撤去しないでください。
業務用と住宅用を使い分ける
消防法令に基づく一般的な消火器の設置では、用途に合った業務用消火器を選びます。
消防法施行規則第6条の消火器具には住宅用消火器が含まれません。
そのため、店舗に住宅用消火器を置いただけで通常の法定設置を満たしたことにはなりません。
住宅用消火器は家庭で使いやすいように開発されたもので、適応する火災が絵表示で示されています。
薬剤の詰替えは行わず、表示された使用期限などに応じて交換する仕組みです。
共同住宅で特別な設備基準を適用している場合は扱いが異なることがあります。
共用部分の業務用消火器を自己判断で住宅用へ置き換えないでください。
どちらの製品を選ぶ場合でも、適応する火災の表示を確かめます。
普通火災(紙・木材など)、油火災、電気火災のどれに対応するかを見ます。
厨房や電気設備など、設置場所の条件に合うものを選定してください。
出典:e-Gov法令検索 消防法施行規則 第6条 、消防庁 住宅用消火器
設置後もレイアウト変更と定期点検で見直す
改装や用途変更で確認する資料
消火器の位置を動かさなくても、室内に間仕切りや棚を増やすと歩行距離や取り出しやすさが変わります。
事務所を飲食店へ変えるような場合は、用途に伴う設置条件も再確認が欠かせません。
工事に入る前に図面をそろえて相談しておくと、完成後の手戻りを減らせます。
消防署や専門業者へ相談するときは、手元に次の情報を用意してください。
- 建物全体と各区画の用途、延べ面積、各階の床面積
- 地階や上階の位置、開口部がわかる平面図
- 火を使う設備・器具の型式と安全装置の説明書
- 現在の消火器の種類・能力単位・配置、前回の点検報告書
- 変更前後のレイアウトと、危険物等の取扱いの有無
「この広さなら何本いりますか」と面積だけを尋ねるより、建物の状況と現況をまとめて伝えるほうをおすすめします。
設置義務・性能・配置を一度に判断しやすくなります。
消火器の場所を移動したい場合も同様です。
新しい位置で条件を満たせるか確かめてから動かします。
消火器の機器点検と建物ごとの報告
法令に基づいて設置する消火器具は、6か月ごとの機器点検が義務づけられています。
一方、設備によって実施する年1回の総合点検の区分は、消火器具にはありません。
「消防設備はすべて半年ごとと年1回の両方」と一律に扱わず、設備別の点検基準に従います。
点検では、配置や標識、外形の損傷、部品の状態などを確かめます。
製造年や機種などによっては内部や機能に関する確認も求められるため、外観を見ただけで完了とは判断できません。
資格者による点検が必要な建物かどうかも、用途や規模などの条件に照らして確かめます。
消防署への結果報告は、点検とは別の周期です。
一般に、飲食店などの特定防火対象物は1年に1回です。
共同住宅や事務所などの非特定防火対象物は3年に1回となります。
複合用途の建物などは自分のテナントだけで区分を決めず、管理会社や所轄消防署に確認してください。
出典:消防庁 消火器具の点検の基準 、大阪市 消防用設備等の点検と報告
消火器は建物の条件と配置を合わせて確認する
消火器の設置基準を確かめるときは、用途・面積・階・火気設備から設置義務を調べ、必要な能力と配置をあわせて判断します。
20mや1.5mという数値だけに目を奪われてはいけません。
対象となる部分や実際の歩行経路、標識の見やすさ、持ち出しやすさまで目を向けることが欠かせません。
関西システムサポートでは、消火器を含む消防設備の設計・施工 と消防設備点検 のご相談を受け付けています。
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