オフィスビルや商業施設を歩いていると、普段は開いているのに「防火扉」と書かれたドアを見かけたことはありませんか。実はこのドア、火災が起きた瞬間に自動で閉まる仕組みになっています。
その秘密が「自動閉鎖装置(レリーズ)」という装置です。
本記事では、防火設備管理者やビルオーナーの方に向けて、自動閉鎖装置の仕組みから法的義務、故障時の対応方法、そして気になる交換費用の相場まで、実務に役立つ情報をわかりやすく解説します。
適切な管理を行うことで、万が一の火災時に人命を守る最後の砦として機能させることができます。
自動閉鎖装置(レリーズ)とは?

自動閉鎖装置は、火災時に防火戸を自動的に閉鎖させ、防火区画を形成する装置です。
「防火区画」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、要は火災が発生したエリアを閉じ込めて、他のエリアへ延焼するのを防ぐ仕組みのことです。
この装置の賢いところは、普段は通行のために開放しておき、火災が発生したときだけ自動で閉まる「随時閉鎖式」を実現している点です。装置名の「レリーズ」は英語の「Release(放す)」が語源。
火災信号を受けてドアを保持していた状態を解除し、閉鎖させる様子を表現しています。
この装置により、避難経路の確保と延焼防止という、一見すると相反する要求を見事に両立させることができました。
特に商業施設や病院、学校など人の出入りが多い建物では、防火性能を維持しながら日常の利便性を損なわないために欠かせない設備となっています。
感知器から閉鎖までの作動フロー
自動閉鎖装置が作動する流れは、まるでドミノ倒しのように連鎖的に進行します。
まず火災が発生すると、天井に設置された煙感知器や熱感知器が異常を検知します。
このとき感知器は「火事だ!」という信号を連動制御盤に送ります。
連動制御盤は建物の司令塔のような存在で、受け取った信号をもとに該当エリアの防火戸に「今すぐ閉まれ」という指令を出すのです。
すると自動閉鎖装置のロック機能が解除され、ドアを開放状態で保持していた力が失われます。
あとはドアクローザー(ドアを自動的に閉める装置)の復元力によって、防火戸がゆっくりと、しかし確実に閉まり、防火区画が完成します。
このシステムは連動制御盤を中心に、感知器、自動閉鎖装置、ドアクローザーが一体となって機能します。
チームプレーのようなもので、どの部分が故障しても防火性能が発揮できません。
だからこそ、定期的な点検が欠かせないのです。
「常時閉鎖式」と「随時閉鎖式」の違い
防火戸には、性格の異なる2つのタイプがあります。
| 項目 | 常時閉鎖式 | 随時閉鎖式 |
| 通常状態 | 常に閉まっている | 開放されている |
| 主な設置場所 | 階段室、エレベーターホール | 廊下、通路 |
| 使用する装置 | ドアクローザーのみ | 自動閉鎖装置+ドアクローザー |
| メリット | 構造がシンプルで確実 | 通行の利便性が高い |
階段室など避難経路として重要な場所では、いつ火災が起きても大丈夫なように常時閉鎖式が採用されています。
一方、通路など日常的に人が行き来する場所では、随時閉鎖式が使われます。
自動閉鎖装置が活躍するのは、この随時閉鎖式の防火戸です。
自動閉鎖装置の主な種類と特徴
自動閉鎖装置には設置場所や建物の特性に応じて、いくつかのバリエーションがあります。それぞれの特徴を理解することで、適切な機器選定や交換時の判断に役立ちます。
電磁レリーズ(マグネット・ドアホルダー)
現在の主流となっているのが電磁レリーズです。
電磁石の力でドアを開放状態に保持し、火災信号により電源が切れると磁力が失われてドアが閉まる仕組みです。
冷蔵庫のマグネットをイメージしていただくとわかりやすいでしょう。
この方式の素晴らしいところは「フェイルセーフ機能」にあります。万が一、停電や配線の断線が起きた場合でも、電気が切れることで自動的にドアが閉まるのです。つまり故障が安全側に働く設計になっており、火災時の信頼性が非常に高いと言えます。建築基準法でも推奨される方式であり、新設や改修時には迷わずこのタイプを選ぶべきでしょう。
ラッチ式レリーズ(旧型)
築年数が経った建物で時々見られるのがラッチ式です。爪のような機構(ラッチ)で物理的にドアを固定し、火災信号で電気を流してラッチを解除する仕組みです。
しかし正直に申し上げると、この方式には見過ごせない欠点があります。
配線が断線した場合、電気が流れずラッチが解除されないため、火災時にドアが閉まらない可能性があるのです。
これは命に関わる重大なリスクです。このため現在では、電磁レリーズへの交換が強く推奨されています。
もし点検時にラッチ式が見つかった場合は、予算を確保して早急な更新を検討していただきたいと思います。
設置方式の違い(床付型・壁付型・上枠内蔵型)
電磁レリーズには設置形状による分類もあります。それぞれに一長一短があるため、建物の特性に合わせて選びましょう。
- 床付型:床面に設置するタイプ。強度が高く、重量のある大型の防火戸に適していますが、小さな段差ができるためつまずきの原因になることがあります。
- 壁付型:壁面や柱に取り付けるタイプ。床面がフラットに保てるため、バリアフリー性に優れています。車椅子利用者が多い施設では特におすすめです。
- 上枠内蔵型:ドア上部の枠内に収納するタイプ。最も目立たず美観を保てるため、デザイン性を重視する空間に最適ですが、設置には専門的な工事が必要です。
建物の用途や利用者層、そして予算とのバランスを考えながら、適切な設置方式を選ぶことが大切です。
防火戸・シャッターのトラブルと対処法
自動閉鎖装置は適切に管理されていれば確実に作動しますが、長年使っているうちに思わぬトラブルに見舞われることもあります。
よくある事例と対処法を知っておくことで、いざというときに慌てずに済みます。
誤作動で閉まってしまった場合の復旧方法
煙感知器の誤報や点検作業中に、突然防火戸が閉まってしまうことがあります。
初めて経験すると驚きますが、落ち着いて対処すれば大丈夫です。
電磁レリーズの場合、手で押し開けて磁石に再び吸着させることで復旧できます。
防火シャッターの場合は制御盤での復旧操作が必要になるため、管理マニュアルを確認するか、専門業者に連絡しましょう。
もし頻繁に誤作動が起きる場合は、感知器の感度調整や清掃、あるいは老朽化による交換が必要かもしれません。
放置すると本当に必要なときに「オオカミ少年」状態になってしまうので、早めの対応をお勧めします。
順位調整器の不具合(両開きドアの場合)
両開きの防火戸には、実は知られざる秘密があります。
2枚のドアは決められた順番で閉まらないと、中央部に隙間ができて防火性能を発揮できないのです。
この閉鎖順序を制御する小さなヒーローが「順位調整器」という部品です。
ところが学校などでは、生徒たちが順位調整器にぶら下がって遊び、破損させてしまうケースが後を絶ちません。
小さな部品ですが、これが壊れると火災時の致命的な被害拡大につながる可能性があります。
点検時には順位調整器の変形や破損がないか必ず確認し、不具合があれば即座に修理しましょう。
物を置いてはいけない理由(閉鎖障害)
これは本当に声を大にして言いたいのですが、防火戸やシャッターの周辺に段ボールや備品を置くことは絶対に避けてください。
過去には、倉庫火災で防火シャッターの下に置かれた荷物が閉鎖を妨げ、延焼が一気に拡大した痛ましい事例があります。
せっかく高額な自動閉鎖装置が正常に作動しても、物理的な障害物があれば何の意味もありません。
日常管理として、防火設備の周辺には一切の物を置かないルールを徹底しましょう。
「ちょっとだけなら」という油断が、取り返しのつかない事態を招くのです。
建築基準法・消防法における点検義務と基準

自動閉鎖装置を含む防火設備は、建築基準法に基づく定期検査の対象です。「うちは小さなビルだから関係ない」と思われるかもしれませんが、建物所有者には法的な点検義務があり、専門技術者による検査が求められます。
運動エネルギーと閉鎖時間の基準
防火戸が閉まる際、実は細かな安全基準が定められています。
挟まれ事故を防ぐため、ドアが閉まる際の運動エネルギーは10ジュール以下、閉じる力は150ニュートン以下に制限されているのです。
数字だけ聞いてもピンとこないかもしれませんが、要するに「人が挟まれても大けがをしない程度の力」ということです。
これらの基準を満たすため、ドアクローザーの調整や危害防止装置の設置が必要になります。
点検では閉鎖速度の測定も行われ、基準を超えている場合は調整や部品交換が必要です。
定期点検の頻度と資格
防火設備定期検査は、特定建築物では年1回の実施が義務付けられています。
検査は防火設備検査員などの有資格者が行い、作動確認、外観点検、連動試験などを実施します。
検査結果は特定行政庁に報告する必要があり、不適合箇所が見つかった場合は速やかな改善が求められます。
「報告を忘れていた」では済まされず、違反が放置されると建物使用停止命令などの行政処分を受ける可能性もあります。
年に一度のことですから、スケジュール帳にしっかり記入しておきましょう。
自動閉鎖装置の交換時期と費用相場
自動閉鎖装置は、残念ながら永遠に使えるものではありません。
しかし適切なタイミングで交換することで、火災時の確実な作動を保証できます。
耐用年数と交換のサイン
電磁レリーズの電気部品は、一般的に10年から15年程度が交換の目安とされています。
メーカーの試験では50万回の開閉にも耐える頑丈な設計ですが、実際の使用環境では湿気や埃の影響を受けるため、想定より早く劣化することもあります。
交換のサインとしては、次のような症状が挙げられます。吸着力が弱くなって風でドアが開いてしまう、作動時に異音が発生する、本体に錆びや変色が見られる、作動が不安定で時々閉まらないことがある。
こうした兆候が見られた場合は、火災が発生する前に予防的な交換を検討しましょう。「まだ使えるから」と先延ばしにすることが、最も危険な判断です。
交換費用の目安
気になる交換費用ですが、レリーズの更新工事は機器本体と工事費を含めて、1か所あたり7万円程度からが相場です。
「意外と高い」と感じられるかもしれませんが、人命を守る装置と考えれば決して高くはないはずです。
ただし設置場所の条件(高所作業の有無など)、配線工事の必要性、使用する機器のグレードによって費用は変動します。
建物全体で複数箇所をまとめて交換することで、工事費の削減が期待できますので、一度に計画的に進めることをお勧めします。
見積もりを取る際は、必ず現地調査を依頼し、詳細な費用内訳を確認してください。
「安いから」という理由だけで業者を選ぶと、後々トラブルになることもあります。
まとめ
自動閉鎖装置は、火災時に人命を守る最後の砦となる重要な設備です。
電磁レリーズとラッチ式の違い、作動の仕組み、そして適切な維持管理の方法を理解することで、万が一の際にも確実に機能する防火設備を維持できます。
特に重要なのは、次の3点です。防火戸の周辺に物を置かないこと、定期点検を確実に実施すること、そして老朽化した設備は「まだ大丈夫」と過信せず早めに更新することです。
日常の小さな注意と投資が、火災時の大きな安全につながります。
もし点検時に不具合が見つかった場合や、古いラッチ式レリーズを使用している場合は、速やかに専門業者へ相談しましょう。「うちは火事にならないから大丈夫」という根拠のない自信は禁物です。
適切な管理により建物の安全性を高め、そこで働く人々、訪れる人々の命を守ることができるのです。
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